アート見物記(2003年ブリュッセル・マドリードのサーカス)
秋口は11月の海外出張準備のためほとんどアート見物はできず、何しろ初回から欠かしたことのなかった静岡大道芸フェスにすら行けませんでした。そんな私を不憫に思ったのか、神様は出張先で素敵なプレゼントを下さいました。
私はこの業界とは全く関係のない会社に勤めていて、サーカスを求めて出張しているわけではないので、出張先での限られた場所と時間でサーカスを観られるとは端から期待はしていないのですが、今回は偶然が重なりラッキーなことにブリュッセル(ベルギー)とマドリード(スペイン)でサーカスを楽しむことができました。
むしろサーカスを観たことよりも、そこに到るまでの過程が印象深かったのでそれを含めてご紹介しましょう。
◆
《 ブリュッセル編 》
ブリュッセルでの仕事も終わり明日はマドリードへ移動という夕刻に、ホテルのコンシェルジュにサーカス等のパフォーミングアーツを楽しめるところはないか聞いてみましたが、予想通り答えは"No"。
期待はしていなかったし、無愛想なヤツだったのでそれ以上は聞かずに、ならば市内観光でもするかと繁華街はどこか聞いてみると、歩いて10分ほどと地図を渡してくれました。
が、方向オンチの私はすぐに道に迷い、小腹もすいたのでお店に入りパンをほおばりながら自分のいる場所を教えてもらうと、あらまぁ90度の方角違いに歩いてきているではないですか。ひどいオンチだねぇと地図で確認していると、このお店の近くに"Cirque Royale"という文字をたまたま発見!これって、"王立サーカス劇場"ってこと?
ならば実際に確認してみるかと、店を出て探しだすとやはり道に迷う・・・
やれやれ困ったものだと我ながら呆れているとたまたま偶然にもチョコレート"Mary"のお店に出くわし、出張前からこのお店のチョコをお土産にしようと思っていたのでラッキーと即座に店に入りました。

店主に適当にチョコを見繕ってもらった後に、"Cirque Royale"の場所を教えてもらい、そこでサーカスは観られるのかとか聞いてみてもマダムはよく知らず、そこにたまたまいた若い店員が、そこはサーカス劇場ではなく今は歌手が出演していると教えてくれました。
なんだサーカスが観られると思っていたのに、とがっかりして雑談していると、店員はたまたま知っていた意外な情報を教えてくれました。
「○○っていう公演は、アクロバティックとかマジックとか馬が出てきたりして、面白いらしいわよ。友達がそう言ってたもの。」
聞き取れない○○が何か、そして何処にあるかを紙に書いてもらい、店を出て一応"Cirque Royale"を一見してホテルへ直行。

コンシェルジュに電話番号を調べさせ、公演時間が何時か電話で聞いてもらうと、20時からの公演だが今晩は満席とのこと。
こりゃもう直に行ってキャンセル待ちでもするしかないと思い、ホテルの出口でお客さんを降ろしているタクシーをたまたまキャッチ。
ドライバーが英語を話せることを確認して、いざ出陣。タクシーで15分ほど走ると、おぉっ、それらしきイリュミネーションが見えてくるではないか。

-
- サーカス名:Florilegio
- Webサイト:http://www.ilflorilegio.be/
- 場所:Watermael-Boitstert
はやる気持ちを抑えつつ、通訳役のドライバーと共に受付に行き、キャンセル待ちをお願いするが、何やら今晩はTV収録かなにかがあり一般客は入れないとのこと。
もう明日はフライトなので何とかならないかと、手のひらを合わせてペコペコと頭を下げるがどうしてもダメ。
諦めた私をよそにドライバーはまだ必死に頼んでくれるがそれでもダメ。
がっくりとタクシーに乗り込みホテルに戻るよう頼むと、ドライバーは映画でも観に行くかとかしきりに慰め気を遣ってくれますが、そんな気にもなれずしばらく走っていると、明日息子と最近やって来たサーカスをたまたま観に行くけれどそこに行ってみるか、と言うではないですか。なに〜っ、早く言えよおっ!って感じ。
当然そのままそのサーカスに直行。
1958年の万博に建てられたアトミウムAtomium近くの公園(と言うか森)の中にテントがありました。

-
- サーカス名:Bouglione
- Webサイト:http://www.bouglione.be/
サーカスを堪能した後に、英語の話せるスタッフにタクシーを呼ぶよう頼み、10〜15分位で来るよと言われ、外で待つこと45分・・・来ない。
サーカスの照明はとっくに消え、団員たちは早くも自分たちのトレーラーに戻り、森の中ゆえあたりは真っ暗。ここでさらわれても誰も分からないだろうなぁ等と不安が増す中、車はもう来ないだろうと、明かりのついているトレーラーのドアをノックし助けを求めて出てきた団長に事情を説明し、再度タクシーを呼んでもらい無事ホテルに帰ることができました。
◆
《 マドリード編 》
土曜日の夕刻にホテルに到着し、早速ブリュッセルと同様にコンシェルジュに聞いてみると、やはり案の定答えは"No"。
今回はここで引き下がらずに、そんなこと言わずに地元の新聞か何か見て下さいよ、と言うと渋々新聞を奥から持ってきてしばらく眺めていて、新聞の下段のほうを指さします。
そこには"Circo"の文字が!

-
- サーカス名:Circo Mundial
- Webサイト:http://www.grancircomundial.com/
11月7日から公演を開始したばかりのようで、明日16日の日曜は12:00、16:30、19:30の3回公演で、場所はなんとラス・ベンタス闘牛場とのこと。
この闘牛場はスペイン最大の収容人数を誇り、闘牛界では最高峰として君臨している由緒ある所です。
翌日は待ちきれずに1時間以上も前に闘牛場に着いて、おぉっここが闘牛場か、としきりに感激。この中にテントが張ってあるんだ。
闘牛場の周りでは観客目当ての移動式メリーゴーランドやらお菓子やおもちゃを売るお店やらが軒を連ねて益々気分を盛り上げます。
30分前に開場し、闘牛場内に張られてあるテントの場所、つまり普段は闘牛士たちが命がけで闘っている砂場から、闘牛場の観客席を見上げた時には何だかゾクッとしました。
そのゾクゾク感はサーカス進行中も失われることなく、久々に大満足のサーカスでした。
◆
平日の夜は会食があったり、週末は移動したりと、仕事以外に空いた時間にぴったりと当てはまるように、幾度となく続いたたまたまの繰り返しの結果、こうやって二つものサーカスに巡り会えたのは単なる幸運ではすまされないような、そんな思いをしたサーカス見物でした。
【ブリュッセルのサーカス】
- ★公演名:Bouglione
- ★公演日:2003年11月14日(金)20時〜22時15分
- ★入場料:26ユーロ(一番良い席)
- ★内容:

- 猛獣ショー
- 山猫3匹、ヒョウ3匹、クロヒョウ1匹
- クラウン
- ガネ渡り(男性1人)
- かなりの高さで飛び跳ね、バク転、縄跳び、火の輪くぐりとスピーディに演技します。
- 空中演技(女性1人)
- 空中につるされた輪に身体を絡ませての空中演技です。
- クラウン
- 象
- 休憩
- 9時〜9時20分(象との記念撮影タイム)
- 足芸(女性1人)
- 操るものは主に細長い筒などで、両手両足を巧みに使って複数本を同時に操ります。
- バランス芸(女性1人)
- 太神楽曲芸の出刃皿のように短刀をくわえて刃の先にサーベルの刃が当たるようにしてバランシング。そのまま固定されたはしごの上り下りを披露します。
- 犬とのコミック芸(男性1人と犬1匹)
- コントーション(女性1人)
- ジャグリング(男性1人)
- サッカーボール4つ、5つ、3つとバク転などを交えてスピーディに演じ、引き続きブーメラン、クラブ3本、麦わら帽3つの演技が続きます。
- ガネ渡り(男性1人)
- 何故か再び同じ演目で、演者は違っているのですが、内容的にはダブりがかなりあります。
- 一輪車(男性1人、女性3人)
【マドリードのサーカス】
- ★公演名:Circo Mundial
- ★公演日:2003年11月16日(日)12時〜14時30分
- ★入場料:45ユーロ(一番良い席)
- ★内容:
- (開演前までに)象との記念撮影タイム

- 鑚圏(中国:男性7人)
- 輪の数を3段、4段、5段と増やしていきますが、輪を載せている土台が回転しながらの鑚圏は見応えがあります。
- ラクダ3頭、馬3頭
- 基本的には音楽に合わせて歩いているだけですが、行進のフォーメーションを時折変化させます。
- マジック(韓国:男性2人、女性2人)
- アシスタントがチマチョゴリを着ていたので韓国のパフォーマーなのでしょうか、オーソドックスなイリュージョンを2題披露した後に、なんと象を消しました。
- バランスアクト(男性1人、女性1人)
- 男女ペアによる演技で、クライマックスは男性の頭の上に倒立状態の女性の頭を載せて、そのまま固定されたはしごの上り下りをします。
- 馬3頭
- ジキドのように疾走した馬を相手にした曲馬ではなく、音楽(タンゴ等)に合わせて馬がステップを踏むというという何とも妙で不思議な演技でした。
- トランポリン(男性1人)
- 演者が一人で行いますが、高度なテクニックでコメディタッチからスリリングな演技までこなして観客を沸かせます。
- 大蛇1匹、ワニ8匹
- アイアンホール(ブラジル:男性4名)
- バイクが1台、2台、3台・・・なんと4台まで入っての走りには瞬きすらできません。
- 弾丸空中飛行(北朝鮮:男性7人位、女性1人)
- 出たっ、人間弾丸空中飛行!リンクの端にあるブランコから人間がものすごい勢いで、45度上向きに空中に飛び出し、対極で待ちかまえる人間がキャッチします。凄い迫力で圧倒!!。正確に言うとブランコとキャッチャーの間にはもう1組(2人)のキャッチャーが存在し、演技のバラエティさを増しています。
- 休憩13時30分〜50分
- 猛獣ショー
- トラ2頭、ライオン3頭
- ?(ドミニカ:男性2人)
- 長さ6m位の鉄棒の両端に人間が立って入れる位の大きな筒(直径2m・幅1.5m位?)が接合されていて、鉄棒の中心を軸として筒付きの鉄棒が回転し、その筒の中や外で2人がスリリングな演技を展開します。テレビでは観たことはあるのですが、生で観ると文字通り手に汗握り、思わず叫んでしまいます。
- チャイニーズポール(中国:男性8人)
- 垂直に立てられた二本のポールによじ登ったり飛び移ったりの演技
- クラウン
- 象5頭
- サーカスでの象は何回か観たことがあるが、それらとは違って象も結構いろいろな動きができるんだなぁと感心、結構楽しめました。
【番外編:マリードの大道芸】

- ★公演日:2003年11月16日(日)
- ★場所:マヨール広場
- ★内容:
- 人間彫像の大道芸の方に遭遇、写真を撮らせてくれと頼むとサッカーのリフティングを得意げにし始めて、カメラ目線で微笑んだりと、“彫像”とは思えないほど愛嬌が良かったです。(汗)